第3章、裁判外紛争解決手段(ADR)って…被害者の敵なの?味方なの?

3-7、【コラム】即決はしない!

ある知人が店舗の駐車場で接触事故を起こしました。

相手側の不注意による衝突で、相手もその事を認めて100%の非を認めて謝罪していたのでした。

完全に停車している状態でぶつけられたので、通常なら『過失割合が10:0』で処理される『貰い事故』にあたる内容です。

ところが、いざ損保会社との話し合いになった時に、担当者から「過失割合は5:5です!」と告げられたそうです。

理由は「駐車場内なので、道路交通法が適応されない」(道路ではないので!)との事でした。

…。

この話を聞いて、「そうなのか!」と『納得』と『諦め』を足して2で割った様な感情を抱いた方は…注意してください。

損保にとってあなたは絶好のカモです。

実は、駐車場内では『一般道と同等の基準で過失割合を検討する』事になっているのです。

裁判における判例の大半はそうなっています。

駐車場だから5:5なんて何の根拠もない屁理屈なのです。

ですが、面談の際にプロが間髪入れず5:5の説明を行うと、それらしく聞こえてしまうから…困ったものです。

「でもまぁ、5:5じゃ納得行かない事でしょう。 ただ、本日この場で示談書にサインを貰えるなら、私の権限で限界の6:4で手を打ちます! タイム・イズ・マネー! 他に幾つも事故を抱えてます。 YesでもNoでもどちらでも良いので、選択してください! どうしますか?」…なんて担当者から言われたら、多くの人がサインをしてしまうのではないでしょうか。

もしも今後「公道ではないので、駐車場内の過失割合は5:5です!」なんて言われる事があったら、間髪入れずに、「ウソつくのやめてもらっていいですか。」と、西村博之さん風に返してください。(笑)

(更に「なんか、そういうデータあるんですか?」とか「あなたの感想ですよね!?」と追い込んでもOKです。)

この様に、予め知っていたネタで、相手の発言が嘘だと分かれば『反論する事も可能』だと思います。

しかし、実際の交渉の席では、相手の言っている事が『嘘か本当か分からない』という事も十分考えられます。

そんな時は…

「今言った内容を一度書面にしてこちらに提出してください。 精査した上で解答します!」

と、回答してください。(遠慮なくバッサリ言ってください!)

相手の主張が正しければ、資料の一つとして利用すれば良いのです。

ちなみに、ハッタリ(嘘)をかましていた担当は証拠を残したらマズいので絶対に書面を提出してきません。

その後ダンマリを決めてきます。

もしくは、発言していた内容とは完全に別物の『正しい書面』を提出してきます。(笑)

もしも、嘘の書面を臆面も無く提出してきたら…裁判の際に『虚偽の報告』としてその責任を問えば良いのです。

裁判でも、交渉でも、大切なのは『相手の説明に対して、その場限りで即決しない!』と言う姿勢です。

大人だって、分からない事は五万と有ります!

日本人はカッコつけて、分かっているフリをする人が多過ぎます。

バカで結構! 物分りが悪くて問題無いのです。

必ず書面で提出させて、発言の真偽を確認しましょう。

分かった気になって交渉を進めないでください。

正しくない主張が平然と飛び交う世界です。

誤った情報に踊らされない様に…くれぐれも注意してください。

裁判に提出してくる資料でさえ、本当に正しい情報かどうか…怪しい世界なのです。

ポイントその31: 書面でも録音でも良いので、必ず『証拠を残す』こと!

3-8、【コラム】負ける要因

少し強気な発言をします。

良く「どうしたら裁判で勝てますか?」と被害者の方に限らず、僕の仕事内容を知った方から質問を頂きます。

交通事故に限ってですが…僕には嘘を吐かずに正直に鑑定を行った場合に負ける理由が分かりません。

逆に言えば、『嘘を吐いて、それがバレるから裁判でボロボロに負ける』のです。

そもそも初めから嘘を吐かなければ、『負ける可能性は極端に低い世界』だと思ってください。

何度も言っていますが、『自分の都合の良い様に事故の様態を作る事』が交通事故鑑定ではありません。

僕が推奨する被害者自身のセルフ鑑定で『素人でもプロに勝てる』のは、『嘘を吐かない』からです。

『物理的に正しい主張』に徹すれば、その内容は学問として正しいか間違いかの問題しか有りません。

「得をしたい!」、「有利になりたい!」と思って事実をねじ曲げるから、物理的に矛盾が生じるのです。

正しい事故の様態を証明して、その過失に応じた損害賠償を過不足無く受け取る事が、僕の目指す理想です。

同時に、『物証から導かれた正しい事故の様態』は、相手側の嘘を暴き、でっち上げの事故の様態を認めさせない『防御壁』になります。

皆さんも嘘偽り無く事故と向かい合ってみてください。

相手が嘘吐きだからと言って、こちらも嘘で対向してはいけません。(いずれ矛盾を指摘され、裁判で苦しい思いをする羽目になるでしょう!)

事実だけを追求してください。

裁判で負けない為の、基本の心構えです。

ポイントその32: 交通事故の争いでは『勝つ事』よりも『負けない事』が重要!