第4章、交通事故と物理学

4-1、継続は力

特に弁護士の皆さんに強くお願いします。

僕は弁護士さんを対象にセミナーを開いています。

お題は『交通事故鑑定人が使う不正の手口』です。

『手品のタネ明かし』よりも学校の勉強に近い内容で、『交通事故の鑑定に潜む嘘の見つけ方』について講義をしています。

交通事故案件に数多く触れている弁護士さんでも、物理学に精通している人は殆ど居ないのが現状です。

人は誰しも知識として持っていない事柄については、簡単に騙されてしまう恐れが有ります。

興味を持って頂けた方は、お時間を作って貰えると幸いです。

セミナー後、「勉強になりました!」、「よく分かりました!」といった嬉しい言葉を頂く事があります。

ありがとうございます。

ですが、更にもう1歩突っ込んで考えてください。

交通事故案件で『今まで物理的な考察を行っていなかった』事に対し、恐怖を感じて貰いたいのです。

この恐怖の度合いに比例して、その後の学習への『気持ちの入り方』が変化します。

物理学を上手く利用する方法を考えてください。

もちろん、『物理を用いて交通事故で起きた全ての事象を紐解く事』は、かなりの労力を要します。

(正直、しんどいです。)

しかし、相手側の主張する嘘を『嘘だ!』と証明する事はそれ程難しくありません。

事実と嘘の点と点を結んで線を作ってください!

それにプラスして、講義で手にした情報を、今後『どの様に活用するか?』考えてください。

あと、僕の講義を1度聞いたら、それで終わりではありません。

交通事故案件において物理的思考によるアドバンテージを希望される場合には、定期的・永続的な自学自習が必要です。

少し物理を理解した状態で、自身が戦った過去の交通事故案件の資料を再び『物理的な目で読み返してみる』と、新たな発見が有るかもしれません。

ポイントその33: 終わりではなくスタート地点! 物理の学習を続けてください。

4-2、物理学はモノサシ

被害者で交通事故鑑定人を雇う人は稀で、その存在すら知らない人が殆どです。

だから、被害者側の多くは弁護士が看破されると非常に不利な状態に陥るのです。

しかも、交通事故の鑑定は物理学がメインです。

物理学を理解していないと、相手側の矛盾した主張に気付かず、事実をねじ曲げられる恐れが有ります。

既に気付いている人も多いと思いますが不正を使ってくる面々は『物理的に矛盾した主張』をしてきます。

これは、先に自分たちにとって都合の良い状況を考えて、それに残された証拠を当てはめて行くので、最終最後のどこかで物理的に帳尻の合わない場所が出てくるのです。

しかし、物理学を知らないと相手の主張する不正や矛盾に気が付かず、反論できません。

物理は速度やエネルギーなどの大きさを知る為のモノサシです。

好き勝手な物語を描く事のできるキャンバスではありません。

中には『本件に似た〇〇年の判例から…』の様な説明を多用する鑑定人も居ますが、意味不明です。

引用した事実なんて無視して、その説明の正当性を物理的に説明すれば十分だと思います。

(本来、『〇〇年の判例から…』ではなく、『エネルギー保存法則から…』の様な普遍的物理式を基に説明を行うべきなのです。)

残念ながら、過去の判例は必ずしも全て物理的に正しい事を言っているとは限りません。

『状況が似ている』と言う理由だけで引用してしまうと…間違っていても使い続けてしまう悲劇が繰り返されるのです。

地形や条件が似ていたとしても、過去の判例が使えない事は珍しくありませんし、そもそも過去の物理式の使い方自体が間違っている事も有ります。

過去の判例を利用する際には、『矛盾が生じないか?』物理的な裏を取って引用する必要が有るのです。

この手間を怠ると、とんでもない大暴投に繋がります。

その様なエラーを自分が行わないのはもちろんの事、相手側が暴投した際にはキッチリ塁を進めてください。

ポイントその34: 過去の判例を引用した箇所には、特に目を光らせる!