第4章、交通事故と物理学

4-5、自分で答えを見つける

電子書籍1冊目の『簡単な計算で、交通事故での「嘘」は99%暴かれる。-衝突角度・ブレーキ-』(以下、『前著』)のタイトルについて、クレームが入りました。

「これ読んでも99%暴くのは無理ではないのか!?」

との事でした。

その通りです。

ですが、「タイトルが大げさである!」と言う指摘については、答えとしては50点です。

先に言いますが、前著だけを読んで、そこに書かれている内容だけで裁判で勝負をしようとしたら、相手の嘘を99%暴く事は不可能です。

大切なのは、問題に取り組む前に『前提となる思想』

・たとえ裁判でも相手側は嘘を言う(事がある)。

・大学教授などの学術者も間違う(事がある)。

・だから自分で正しい答えを導く(必要がある)。

…これが前著で手にして欲しい結論なのです。

他所にも書いた内容ですが、おさらいで書きます。

・相手はプロだからこそ、儲けの出る話を行う!

・多忙な大学教授が緻密な鑑定を行えるか疑問!

・嘘を言っていないなら、自分を信じろ!

この認識が出来ていれば、あとは簡単な計算で相手の嘘を99%暴く事が可能だと思います。

全ての交通事故で通用する『不正の暴き方』を網羅した書籍を出そうとしたら、とてつもないページ数と金額の書籍になる事でしょう。

個人的には『全網羅された不正暴露本の出版』を目指すのも面白い試みだと思っていますが、本書や前著はその始まりの一歩でしかありません。

僕が目指す道はまだまだ長く、果てしなく続きます。

結論を言うと、前著の内容だけでなく『自分の事故に合う答えを自分で見つけないと、裁判では戦えない!』と言う事です。

この時、注意しなければいけないのが、『工学鑑定とは、答えを勝手に作る事』ではありません。

『物証から物理的に矛盾しない答えを見つける』事…それが最強の工学鑑定を手に入れる一番の方法なのです。

(攻めでも守りでも…です。)

『答えを見つける事』と『答えを創造する事』には雲泥の差がある事が前著で分かって頂けていれば、何も恐れる事はありません。

物証が有ってこその物理的主張なのです。

ポイントその37: 交通事故鑑定はワンオフ(一点物)。 周りの雑音に惑わされるな。 最終的な答えは自分で出す様に!

4-6、棒倒し

交通事故を物理的に説明する作業は、子供の頃に砂場でやった『棒倒し』と言う遊びに似ています。

砂の山に棒を立てて、棒が倒れない様に砂を削って行き、最終的に一番砂が多い人が勝ちになる遊びです。

現場図


イカサマ鑑定人を含めて、多くの人が誤解されている事の1つに、『交通事故を物理的にズバリ証明する方法が有る!』と思っている点です。

よっぽど単純な事故でない限り、物理的にズバリ証明する事は不可能です。

そもそも、単純で分かり切った事故であれば、料金も高額な交通事故鑑定を依頼しません。(笑)

交通事故の鑑定は、『○○は絶対に有りえない!』と断言できる○○に入る事柄を1つでも多く見つける作業です。

現場の状況より、『原告(被害者)の速度は○km/h以下で、被告(加害者)の速度は△km/h以下。 衝突角度は◇°以上で、◎m引きずった後、原告のみ停止…』といった感じに、残された物証から事故の概要が分かります。

大雑把な事故の姿が分かった上で、『全てを同時に起こそうとする』と、更に幾つか上手く行かない事象が出てきます。

その時に速度や角度などで『考えられない値』の条件が、更に細かく増えて行きます。

残された物証を照らし合わせて、この作業を何度も何度も繰り返す事で各値の範囲も狭まり、事故の全容がおぼろげに見えてきます。

ここまで行くと、棒倒しと言うよりも、遺跡の調査や化石の発掘に近いイメージかもしれません。

この様な感じで、『ズバリ事故の全容を言い当てる』のではなく、『絶対に起こらない事を複数組み合わせる事で、一歩ずつ事故の事実を明らかにする』のが、物理的なアプローチで行う交通事故鑑定のやり方です。

最初はざっくり大雑把な内容で構いません。

その後、現場の状況を何度も調べて値を当てはめて計算した上で、徐々に精度を上げて行けばOKです。

『物理的に説明できる事柄』のみを利用して、順に事故の状況を明らかにしてください。

(この時、フィクションはNGです! 事実だけで積み上げてください。)

ポイントその38: 残された物証の全てに合致する事象を考える!