第5章、角度の詳細

5-3、回転移動(理論)

旋回運動は『円運動』と仮定して考えます。

よって、点aは回転移動の一次変換で求められます。

座標(X,Y)を角度θ回転させた場合の座標を(X',Y')とすると、

回転運動


と表す事ができます。

回転運動(第1象限)


ちなみに、第1象限で左回りの例が一般式(①、②)ですが、第2象限で右回りは鏡像なので、上式のまま使用できます。

X軸とY軸を固定して座標の±を考え直すよりも、『鏡像』だと思って右旋回を考える方が簡単です!

回転運動(第2象限)


回転運動(式)


①'+②'より、xy sinθ を相殺

回転運動(式1+2)


回転運動(式)


回転運動(cos=式)


回転運動(式)


この式にそれぞれの値を代入する事で、車両が円運動を行った際の『ある地点(X'、Y')での衝突角度θ』を求める事ができます。

ポイントその45: 第1象限と第2象限は鏡像と考える!

5-4、回転移動(実践)

【補足】

交通事故現場見取図


実況見分調書の②地点にも書かれている通り、被告車両はセンターラインから0.40m手前の場所から右折を開始しています。

(不思議な事に、②が0.40m空いてる事は、裁判中は誰からも指摘を受けなかったんです…。 前著はプロの鑑定人も結構買われているのに…不思議ですよね。。。 あ、逆かもしれません!? プロだからこそ、お金が払われない案件では微動だにしないのかもしれません。)

この点を厳密に考慮すると、以下の座標になります。

【衝突地点の座標】

加害者車両の位置関係

車両後部から後輪までは0.93m。

後輪から車両前部までは3.43m。

後輪から衝突位置×までは1.57m。

センターラインまでは0.40m。


後輪を軸に座標を考えると、点c(左後輪端)=(8.07,0)

点×=(8.07,1.57)、

車両の左フロントの座標=(8.07,3.43)

旋回時の座標


点×=(8.07,1.57)を旋回させて、対向車線の中央を通過する際の座標を求める。

線分cdの距離は2.07+1.65 = 3.72m。

衝突地点aのX座標 X'=8.07-3.32 、X'=4.35

旋回時の座標計算


半径Rの大きさからY'の値は求められます。

Y'2=8.072+1.572-4.352 、Y^'=6.976… となります。

回転移動の一次変換

回転運動の座標計算式


より、それぞれの個所に値を代入して、

回転運動の座標計算式2


と書ける。

(式①×8.07)+(式②×1.57)で、式からsinθを除く事ができます。

8.072cosθ-1.57・8.07sinθ+1.57・8.07sinθ+1.572cosθ

回転運動の座標計算式3


(8.072+1.572)cosθ

回転運動の座標計算式3


回転運動の座標計算式3(cosθ=)


cosθ=0.681421257… (ただし、0≦θ≦π/2とする。)

cos-1cosθ = cos-1 0.681421257…

この様に、sinθかcosθどちらか一方だけの等式に変形し、インバースを当てる事でθの値を計算できます。

以上より、θ=47.0451947…°

つまり、現場の地形で障害物に接触せずに右折を完了するには『最低でも衝突角度が47.04°を下回る事は無い』事が、物理的に証明されるのです。

ポイントその46: 現場の地形から『最大値と最小値の値が決まる』と、速度や角度の値もその影響を受ける。