第3章、裁判外紛争解決手段(ADR)って…被害者の敵なの?味方なの?
3-1、ADR(裁判外紛争解決手続)
交通事故の後、進展しない現状を打開したいが、あまり事を荒立てたくはない。 また、費用も掛けられない。
…そんな理由から交通事故紛争処理センター(以下『紛セン』)を利用する被害者が居ます。
(紛センの所在地:http://www.jcstad.or.jp/map/index.htm)
紛センを含め、『裁判外紛争解決手段』の事をまとめて『ADR (Alternative Dispute Resolution)』と呼びます。
紛センを簡単に説明すると、『中立な立場の弁護士が被害者側と加害者側(損保会社)の双方の意見を聞いた上で事故の和解案を提示してくれる場所』です。
『中立』と言うと聞こえは良いですが、多くの皆さんが想像する『交通事故という事象に対する中立』ではありません。
基本的に『どちらの味方もしない!』と言う意味の中立です。
『通すべき主張』や『請求すべき補償』などがきちんと分かっている人にとっては利用価値が有るかもしれません。
しかし、被害者の多くはその様な法的な内容に不慣れで、主張も請求も過不足無く行えないのが通例です。
中立の立場である紛センの弁護士は、「あれも請求できますよ! これも請求できますよ!!」…と、手取り足取り教えてはくれません。
彼等の業務は双方の主張に対して、『通るか?通らないか?』の判断を『中立』に行うだけなのです。
ポイントその25: 『中立』の意味を正しく理解する!
3-2、ADRでも、事前の準備が必要
一部の書籍やWEB上の文章には、「損保会社は紛センを嫌がる!」(だから、利用しよう!)みたいな内容が書かれていますが、そんな事は全くありません。
デマやステマの一種だと思ってください。
損保会社は紛センを嫌がりません。
何の理論武装もしないでノコノコ出かけて行った所で、状況は何も好転しません。
損保会社側からはそれまでと何も変わらない厳しい主張を、紛センでも突き付けられる事でしょう。
(一方的な相手側の主張でボコボコにされて終わります。)
紛センに限らず他のADRであっても、裁判所であっても、基本的には何も変わらないと思ってください。
何度も言います。
『誰も助けてくれません!』
自分で事実を主張し、証明しなければならないのです。
残念ながら現実の世界では、勝手に不正を暴いてくれる『遠山の金さん』の様な人はどこにも存在しません。
仮に、裁判官が事件の足取りを追って現場をウロウロしていたら、日本の裁判は更に遅くなってしまう事でしょう。
逆に、「ちゃんと仕事しろ!」と、裁判官へのクレームになってしまいます。
当然ですが、検事が主役の『HERO』も『京都地検の女』も『女検事・霞夕子』も…全てフィクションです。
事件の真相が暴かれて解決するのは、テレビドラマの中だけの架空の話だと思ってください。
弁護士の方はほぼ皆さんご存知ですが、特に被害者の皆さんは『誰かが何かをしてくれる!』と言った甘い考えは捨ててください。
必ず自分自身で事故にまつわる証拠や主張すべき事柄に関する情報を集めてください。
ADRに臨む場合も何ら変わりはありません。