第4章、交通事故と物理学

4-3、『愛』が全て

交通事故鑑定人の中には「物理学は万能じゃない!」と豪語する人も居ますが、それでは…何を根拠にして自分の主張が正しいと言っているのでしょうか?

裁判に提出される書面の中には、矛盾だらけの工学鑑定(?)も有るので、それらの事を否定した発言なのですか?

ただ、そんな事で物理学を全否定する事はできません。(矛盾を証明できるのも、また、物理学なのです。)

実際には、物理学を用いる事で事前に『大まかな値を知る』事ができます。

破壊に使われたエネルギー、ブレーキ痕で消費したエネルギー…事故後残された証拠から、事故直前の車両の状況をある程度推察できます。

物理学を使う・使わないは個人の自由ですが、おおよその値も算出でき、自分自身に間違いが有ればそれも同時に発見できるので、僕は交通事故後の調査では物理学の利用を強くお勧めします。

あと、これは僕個人の感想ですが、交通事故鑑定での物理学の利用を否定する人ほど…そもそも物理学を分かっていない事が少なくありません。

その様な人(プロ)に過去の鑑定書面を見せて貰うと、物理的につじつまの合わない見るも無残な姿の鑑定を目にする事があります。

非常に残念ですが、これが日本の現状です。

一般的に「〇○が全てだ!」と主張する際、○○に当てはまる内容が1つだけである事は稀です。

例えば、「交通事故の裁判では〇〇が全てだ!」と主張する場合、○○に入る言葉を1つだけに絞る事はできません。

・『当事者から話を聞く』事が大切。

・『残された証拠から物理的に事故を紐解く』事が大切。

・『身体に残った傷から、加わった力知る』事が大切。

・『事故現場の状況から原因を推察する』事が大切。

・『目撃者を捜して、事故の状況を知る』事が大切。

まだまだ沢山有ります。

物理学も、大切な項目のうちの1つであり、説明する為の手段の1つに過ぎません。

当然、物理学が交通事故の裁判の全てではないのです。

ただ、これは言葉のトリックで、「○○だけが全てじゃない!」と言う言い方をすると、どんな物事でも否定する事ができます。

愛、お金、恋人、仕事、勉強、友情、実力、気合い…

どんな物事でもです。

「物理学だけが交通事故裁判のすべてじゃない!」

当たり前です。(笑)

題名の「『愛』が全て」は、皮肉です。

不思議な事に、そんな当たり前の事でも大きい声で言うと、それらしく聞こえます。

仮に、熟練の大工がこんな事を言ったとしましょう…

「椅子やテーブルを作るのにモノサシは必要無いっ! 目で見れば分かるっ! 長年の経験で分かるっ!!」

…確かにモノサシが無くても椅子やテーブルは作れますが、モノサシが有った方が、より正確に作る事ができるのではないでしょうか?

答えは皆さん自身で考えてください。

『誰の主張が正しいのか?』

常に冷静に判断してください。

ただ、この件で僕は少し別の事も感じています。

「彼らは物理的なツッコミを受けるのが、相当嫌なんだな~!」と思いました。

だって、必死ですよね?

交通事故における物理学の否定に血眼になっています。

(被害者や弁護士さんが物理学をマスターして、裁判資料に好き勝手書けなくなったら…インチキ鑑定人は即効でオマンマを食いっぱぐれるので、危機感を抱くのは当然の反応と言えます。)

インチキ鑑定とは、事故の当事者の片方を一方的に有利にさせる為の証明を行う仕事で、物理的な考察を軽視している事も少なくありません。

(大手は汚い事はしません。 下請けなんですよ。 責任も込みで。 被害者にそれらしい嘘八百を並べて、補償を下げさせるのが彼らインチキ鑑定人の仕事です。 そういうお仕事なんです。)

逆にこれだけ『嫌がる』って事は、『効果が有る』って事の裏返しだと…前向きに捉えています。

だから、被害者や弁護士の皆さんも、少しでも多く物理学や物理的思考をマスターしてください!

ポイントその35: 皆さん自身がパワーアップする事は、大きなプラス要因! 何らマイナスには働かない!

4-4、物理学のキャッチボール

裁判では同じ事故に対して『互いに全く違う事故原因を主張している』事がほとんどです。

本当に、不思議ですよね!?

しかし、この時たまに『相手側の間違いについては殆ど触れないやり取り(?)』を見る事があります。

交通事故の鑑定はゴルフのドライビング・コンテストみたいに、自分の主張だけ遠くに飛べば良いわけではありません。

裁判もキャッチボールです。

相手の主張を理解した上で反論する為に、1ヶ月程の間隔を設けて原告と被告が交互に交通事故に関する鑑定書面を提出するのだと…僕は理解しています。

相手側の物理的な間違いに対しては釘を刺しておかなければ、好き勝手に主張され続けます。

そうはならない様に…と祈りを込めて、セミナーでは交通事故鑑定の嘘についての解説と論破する方法をお伝えしています。

講義とかセミナーと言うと少し大袈裟ですが、僕のイメージを『物理の家庭教師』だと思って頂けると嬉しいです。

調査・鑑定を鑑定人に丸投げされる方も見えますが、僕は相手側の不正やこちらの説明をできる限り解説します。

被害者の方でも弁護士の方でも、『なぜ?どうして?』という理由部分を正しく理解されたい方にだけお勧めします。

(都合の良い結論有りきの鑑定の依頼は受けませんので、ご了承ください。)

セミナーにつきましては一定の人数が集まれば不定期で随時行っていますが、時には無料で行う事もあります。

この様な会では、逆に僕が会場の皆さんに質問をして『皆さんが持っている知識を分けて頂く事もあります』ので、ご了承ください。

この様なキャッチボールに興味のある方は是非ご参加ください。

(特に、交通事故に詳しい方はウェルカムです!)

ポイントその36: 一方的な主張ではなく、対話が重要!