5-5、回転移動(計算後の検証)
駐車場内手前で加害者車両が右折を完了させるには、衝突箇所×が対向車線の中央(衝突現場点a)における加害者車両の角度は、θ=47.04…° 以上となる。
この時の旋回半径Rは8.22…(m)であるので、加害者車両は駐車車両などの障害物に衝突していない事実からも、実際の半径はこれより小さな値だと言える。
事故直後の写真からも分かる通り、加害者車両は駐車場内の道路の左側に停車している。
以上の事より、駐車車両にギリギリぶつからない様な大きな旋回半径の進路を取ったとは考え難く、より小さな旋回半径で速やかに右折したと思われる。
(旋回半径が小さいと、衝突角は深くなる。)
点aを通る円は、障害物に当たらない事を考慮すると、『R = 8.22(m)よりも小さくなければならない』と言える。
以上より、
① 右折開始地点のX座標
② 衝突地点のX座標
③ 右折が終了する点(原点O)の場所
この3点が決まっていれば、『衝突時の角度は1つに定まり、円運動から逆算する事が可能』
です。また、加害者車両の最小回転半径は4.5mなので、それを下回る事もありません。
よって、障害物にぶつからず、舵角が一定の時の衝突角θの最大値は75.79…°となります。
ちなみに、図からも分かる様に、半径Rが小さい場合は衝突場所が隣の象限(鏡像の第2象限=第1象限)に移る事もあります。
その場合、X'やcosθの値はマイナスになります。
しかし、θの値自体は0~90°以下に収まりますので心配せずに計算を進めてください。
ポイントその47: 回転移動が可能な値には、必ず範囲が存在する。
5-6、センターライン手前での角度
今までの内容は、『加害者車両が0°の状態から右折を開始した場合』の話です。
『センターラインの0.40m手前で、加害者車両が既に角度の着いた状態だった場合』衝突位置で90°になる事も考えられます。
ただ、裁判中は「90°近辺では!?」と主張しましたが、現在の僕自身は被告車両の衝突角度が90°だった可能性は低いと思っています。
見ての通り、90°になる為には『車線の中心より左の位置から右折を開始する必要が有る』ので、余程の理由が無い限り『行わない動作』だと思うからです。
ちなみに現在は、先の計算で出した75.79°を下回る70°程が衝突時の角度だったと予測します。
(ただ、可能性としては90°での衝突も全くの0ではなく、むしろ起きる可能性が十分考えられる事象だと言えます。)
以上の様に、事故後、被告車両は駐車車両に触れる事無く事故後に駐車場内に停車したので、矛盾が発生しない範囲で衝突角度等の考察を行う必要があります。
ただ、残念な事に、既に説明した様に損保の交通事故鑑定人や、裁判所が依頼した大学教授は…全く説明のつかない衝突角や旋回半径の値で仮定を行いました。
相手側の損保会社は「衝突時の角度は25°以下であった!」と断言し、大学教授は、「衝突角度は約40°(38°)」としたのでした。
現場の状況(道幅・障害物)では、衝突角度が47.04°を下回ると加害者車両は右折を完了する事ができません。
その事は、前述の説明でご理解頂けたと思います。
被害者の心情として、学術者やプロ鑑定人が言った言葉を鵜呑みしたくなる気持ちは分かりますが…現実はこの有様です。
交通事故において、「物理は何の役にも立たない!」と主張する関係者も居ますが、恐らくその人は物理の使い方自体が間違っているのだと思います。
世の中には『正しい物理』も有れば、『間違った物理』も有るのです。
何度も言います。
物理学を利用して「これが答えだ!!」と、事故の様態をピンポイントで逆算できる事は稀です。
ですが、「この値は絶対に違う!」と言う感じで『現場の状況に矛盾しない形で取り得る値の範囲を限定』する事は、多くの事故案件で行う事が可能です。
本件の事故に限らず、『加害者車両が駐車車両や縁石などの障害物に接触せずに右折を完了する事』は、必ず満たさなければいけない条件です。
その様な『当然、満たさなければいけない条件』を無視し、完全に破綻している交通事故鑑定が多過ぎるのです。
※後輪を軸にして正確に計算しても衝突角度が47°あたりが下限であり、プロの皆さんが出した値は両方とも駐車車両に突っ込む結果になります。
(厳密には、下限は 47.04519479…°になります。)
以上、交通事故では僕を含め、交通事故のプロや学識経験者や法律のスペシャリストの言う事を鵜呑みにしてはいけません。
特に、交通事故後の話し合いについては、21世紀の我等が日本では『未だに惨憺たる状況』だと思ってください。
疑うなら、調べてみると良いでしょう。
過去の裁判資料を検証したら、驚くほどの数の物理的に矛盾した交通事故鑑定を目にする事でしょう。
しかもこれらのほぼ全てが『物理的に書かれている』にも関わらず…です。(もう、笑い話ですよね!?)
たとえ裁判にならなくても、交通事故の案件では自分側にとって都合の良い主張や、好き勝手に主張するプロ活動家が多過ぎるのです。
そして、何の力も持っていない我々被害者は、知恵と工夫でこの難題を乗り越えなければならないのです。