第3章、裁判外紛争解決手段(ADR)って…被害者の敵なの?味方なの?
3-3、『中立』の本当の意味…分かってる?
一度、逆の立場で考えてみてください。
仮にあなたが『紛センの弁護士』だったとしましょう。
紛センの業務を行う事でお給料を貰います。
紛センは無料で利用できる施設です。
…では、働いている弁護士の給料はどこから支払われるのでしょうか?
もちろん紛センからです。
それでは、紛センの運営費用はどこが出しているのでしょうか?
国や地方ではありません。
各保険会社から出されています。
(※損害保険会社、JA共済連、全労済、交協連、全自共、日火連から拠出されています。)
紛センの弁護士さんの立ち位置が理解できましたか?
それでは、彼等は被害者にとって敵でしょうか? それとも、味方でしょうか?
いやいやいや…もちろんどちらにも加担しない中立公正な業務を全うされている事と思います。
ですが、『一方的に被害者の肩を持つ様な行動はしない!』と言う行動原理は…理解できるのではないでしょうか。
中には『スポンサーに喧嘩を売る骨の有る弁護士さん』も居るかもしれませんが…恐らくそんな人は例外中の例外です。
そんな社会不適合者は、すぐに居場所が無くなる事でしょう。
だから被害者は「紛センに行けば助けて貰える!」なんて甘い考えを持たず、中立の意味を良く理解して現場に臨まなければならないのです。
結局、一番頼りになるのは自分自身なのです。
ポイントその27: スポンサーに喧嘩を売る社会人は居ない!
3-4、ADRは多種多様
紛センはとても人気の有るADRで、利用の為には1ヶ月近く順番を待つ必要があります。
しかし、利用しても満足の行く結果が得られなれば裁判に発展する事も有り、『二度手間になる可能性』と『先に手の内を見せる危険性』から、最初から裁判で解決する方がスムーズである場合も少なくありません。
『無料だから、ダメ元で何でも使えば良い!』…などと安易に考えていてはいけません。
紛センはボランティアではないのです。
メリットが有るから運営されているのです。
(※チャリンコ同士の事故では紛センは使えません。 何故か? この点を深く考えると…真の姿が見えてきます。)
時間的な遅延や利用効果など、様々な影響を考えた上でメリットの有る使い方でのみ利用してください。
具体的にメリットの有るADRの使用例を挙げると…裁判前の状態で『損保会社が幾らなら払うか』といった数字を入手する為だけに用いれば、裁判の判決や和解の後に効果を実感できる可能性が高いと思います。
物損部分の金額は機械的に算出される物が多いので、紛センに顔を出す以上、『これなら出せる!』という金額を保険会社側は提示してくる事でしょう。
驚くほど低い金額だと思いますが、損保側の出したこの金額を出来るだけ書面で受け取っておいてください。
通常、弁護士報酬は『裁判後の補償の増加分×15~20%』くらいの金額が相場になっています。
(依頼時に確認を取られるので、必ず確かめてください!)
この『増加分』という所がポイントです。
何もしなくても最初から支払われる予定だった補償額に対しては、『弁護士報酬の対象にしない』のが一般的です。
(※事務所によって異なるので、確認してください。)
裁判に影響する様なネタバレは一切せずに、『まっさらの状態で幾ら払う気が有るのか?』を書面で出させる為にADRを利用するのは…被害者にメリットの有る1つの利用方法だと思います。
交通事故の補償問題では、最低でも100~200万単位でお金が動くので、15~20%が求められる弁護士報酬では15万~40万もの金額の差が出てきます。
事故後、生活の変化を小さくする為に、『被害者は受け取る補償額を少しでも多くする活動』が重要になります。
『割引きできる額を知る。』…これは当然の権利なので、変な遠慮はせずに、裁判を行う被害者は必ず確認して利用すべき事柄なのです。
逆に、こういった報酬に関する内容をうやむやにせず、積極的に「今現在、補償に関する相手側の資料は有りませんか?」と聞いてくれたり、無ければ自分で相手に問い合わせてくれる(被害者側に立つ)弁護士さんは、非常に真面目であり、クリーンであり、信頼に値する人物です。
これは弁護士さんにとっては収入が減る話です。
わざわざ話したくない内容でしょう。
だからこそ、この説明をどの様に扱っているかで、良い弁護士さんに巡り合える貴重な情報源だと…僕は思っています。
『依頼人の利益を守る事』が弁護士の存在意義の核心部分ですが、『自身の利益』と『依頼人の利益』を天秤にかけた際にも、正しい行動をされる弁護士さんの存在をとても心強く思います。