第5章、角度の詳細

5-9、【コラム】損保会社は悪者(ワルモノ)なのか?

結論を先に言うと、『損保側の人間は1人残らず全員悪者』です!(笑)

決して気を抜かないでください!

僕自身、書籍やWEBページにおいて、厳しい内容で裁判における損保会社側の対応を批判しています。

ただ、『損保会社そのものが悪か?』と聞かれたら、その答えは「そういう場合もあるし、そうではない場合もある」と答えます。

厳密には、『外注も含め、損保側で交通事故後の対応を行う人の中に、嘘八百を並べる担当者や鑑定人が結構な割合で居る!』と言う事です。

無論、その様な問題の鑑定書面(事故の結論)を作成する業者を雇って、裁判に利用している時点で損保会社自体に責任が有ると言えます。

ただ…損保会社で働いている人の多くは、この事実を知っているかどうか不明です。

「真面目に仕事をしているのに、ネット上等でボロクソに叩かれるのはどうして?」と思う損保社員も居るかもしれませんが、その原因は、『一部の事故処理担当が無茶な主張をしており、彼等と同類とみなされている』のです。

(逆に、一部で『無茶苦茶な事を要求する被害者』も居ますが、それが全てではありません。 それを十把一絡げにして『被害者を叩いても良い理由』にはならないのです。)

嘘を吐いて裁判に勝てば、損保側はその案件での(保険金の)出費を節約できるのかもしれません。

しかし、かすめ取った金額以上に被害者から批判を受けます。

悪さをした本人以外の損保会社の人にも被害を与える結果になるのです。

一昔前の様に、被害者が泣き寝入りして終わらない世の中になってきました。

被害者はネットで調べ上げて対抗してきますし、裁判で不当に負けた際には、SNS等でその情報を拡散・炎上させます。

ログ(過去の経験談)が増えれば、いずれ同じ手は食わない被害者が出てくる事でしょう。

いい加減な対応をしたツケは、結局どこかで払わされる結果になるのです。

このWebサイトも僕の著書も同様です。

「かつての自分と同じ苦しみを抱えている人にメッセージを伝えたい!」

そんな気持ちから始まりました。

僕自身の事故からは約20年経ちましたが、交通事故被害者を取り巻く環境は『殆ど何も改善されていない』と言うのが、僕の率直な感想です。

何の責任も無かったはずの被害者が、嘘八百を並べられて責任を負わされているケースが存在している現実を理解しなければなりません。

そして、それらを改善する為に『どうしたら真っ当に運営する損保が利益に繋がるのか?』を考える時期に来ていると思います。

今までの様な『被害者に対して全否定から始める交渉』ではなく、客観的に事故原因を判断する仕組みを作って、速やかな紛争解決を行う事が一番の利益になる基準を設けるべきでしょう。

今後も変わらずに『被害者は反論してこない!』と高を括って対応していたら、痛い目を見る日が必ず来るからです。

また、胸を張って子供に説明できない様な仕事では、離職率も高いままで人も育たず、業務として回りません。

構造を大きく改める時期に来ているのではないでしょうか。

非常に難しい問題だと思います。

ただ、全ての損保が真似できる事ではないので、『正しい事故後の処理』の分野で他の損保との差別化を図れば、現状のシェアを大きく変化させる程のこの上無い保険商品が出来るかもしれません。

…損保関係の皆さまには、現状を『チャンス』だと捉えて頂けると幸いです。

ポイントその51: 因果応報。 ならば、ツケを溜めない仕組みを考える!

5-10、エール

弊社にお問い合わせを頂いた中には、依頼にまで発展しなかった案件が幾つかあります。

中には鑑定を断られた場合もありますし、こちらからお断りした場合もあります。

その中で、特に僕が『その後を気にしている事故』につきまして、何が問題で懸念されるのか…ここでプレ鑑定をしてみたいと思います。

無論、事実の全てを確認できていませんので、不明な点は予想で作る事になります。

実際の事故とは異なる点が有るかもしれません。

しかし、『何をどう見て、どんな結論を導いたか!?』に注目して内容を読んで頂けると幸いです。

また、可能であれば『自分ならどんな結論に達するか?』鑑定を行ってみてください。

【状況】(事故発生時の天候・時刻は不明。)

①制限速度が40km/hの道路で速度超過(115~120km/h)の為カーブを曲がり切れず、路外ポールに接触。

②そのはずみでセンターラインを越え、対向車に衝突。

③更にその衝撃で対向車線側の石塀に衝突。

④再び対向車に衝突

僕が鑑定を行った場合、上述の様に4つの状況それぞれにおける『エネルギーの変化』を調べます。

1、①路外ポールに接触直前、タイヤ痕は無いか?

2、①路外ポールの破損で消費したエネルギーは?

3、②対向車と衝突直前までにタイヤ痕(消費したエネルギー)は無いか?

4、②対向車との衝突で消費したエネルギーは?

5、③石垣との衝突で消費したエネルギーは?

6、④再び対向車と接触した際に消費したエネルギーは?

これら『全エネルギーの総和が(115~120km/hでの)運動エネルギーに等しいか?』がポイントになります。

6つ全て、それぞれのエネルギーの概算値を出して、合計値を出します。

ちなみに115~120km/hでの運動エネルギーは、

運動エネルギー式

より、


運動エネルギー式


位置エネルギーに変換すると、

位置エネルギー式

より


h_115=52.06…(m)となる。(また、h_120=56.68…(m)となる。)

つまり、115~120km/hでの衝突は、56.68m上空からの落下…およそビルの15~17階の高さからの落下に等しいのです。

これ程までの高エネルギー状態であった事が、『本当に証明できるのか?』が、この事故の争点になります。

事故で消費したエネルギー総和が上述のエネルギーよりも圧倒的に小さかった場合、『最初に仮定した速度(115~120km/h)が高過ぎる』事を意味します。

『制限速度40km/hの道路を、115~120km/hで走行していた』とする速度条件を満たす確かな物証が存在するか否か…が、大きなポイントです。

物証は存在しないのに、責任をなすり付ける為に好き勝手な速度の値を言っているのかもしれません。

1つ1つの状況で消費されるエネルギーを、それぞれ幅を持たせて算出し、その合計を『最大〇〇km/h~最小△△km/h』と言った形で表してみてください。

どんな計算でも、楽をして1まとめにすると誤差は大きくなる傾向があります。

それぞれの場合ごとに細かく区切ってエネルギーの値を算出してみてください。

最後に、『エネルギー総和=1/2 mv2』で等式を作り、これを満たす速度vを計算する事で『正しい速度値』を主張すれば、物理的な矛盾は小さくなります。

必ず計算してください。

ただし、余程の理由(物証)が無い限り、「制限速度が40km/hの道路を115~120km/hで走行していた!」などと言う結論には至らないと思います。

逆に、余程の理由(物証)が存在している場合には、その内、依頼人の車両はどれ程の速度であったのか…責任の所在について明らかにする必要があります。

前著で説明した『冤罪速度』を遥かに上回る値なだけに、それ相応の理由(物証)があって主張されている値だと推察します。

理由も無く主張された内容なら、エネルギー的な矛盾を証明して相手側に突き付けてください。

どんな事故でも『相手側の不当な速度値の言い掛かり』だけでなく、『依頼人側の嘘やごまかし』が無いか…も精査する必要があります。

ご注意ください。

以上が鑑定を行う上でのおおよその流れになります。

もちろん、上記の内容以外にも『事故に関係する物証』が見つかれば、そちらも利用して証明を行ってください。

こちらの件は事故鑑定の依頼には至りませんでしたが、上記の内容が何かの参考になれば幸いです。

ご質問を頂いたのも何かのご縁。

弁護士さんのご健闘をお祈りいたします。

ポイントその52: 『エネルギーの総和が等しい事』が絶対条件!